Era of Suiseisha水星社の時代
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Era of Suiseisha

1960年代のフランス映画主題歌群の選曲には、木下美智子のプロデューサーとしての目配りが光っている。
「突然炎のごとく(1962)」(1964公開)は、御存知ヌーヴェル・ヴァーグの巨頭フランソワ・トリュフォーの代表作。この映画は、トリュフォーの才能とジャンヌ・モローの凄さを見せつけた映画でもあった。主題歌「つむじ風」は、劇中でジャンヌが歌う印象的な大人の童謡。
作曲はボリス・バシアク。

「わんぱく戦争(1962)」と続編の「わんぱく旋風(1963)」
は、珍しい映画だ。
「わんぱく戦争のマーチ」は、日本中に流れた。この曲は、美智子の企画参加したNHKみんなのうたにも選ばれ、甲子園でもお馴染みのマーチへと育っていった。
一作目は日本人の耳に馴染みがなかった“ジャン・ヴィゴ賞”受賞作品である。
仲の悪い二つの村の子供たちが、喧嘩で勝つと相手のボタンや靴紐をむしり取るゲームがあり、それならいっそ裸でと、子供たちが策を講じる話である。子供の性器が出るので、現代なら絶対に撮れない映画だが、映画自体がとても良く出来ていた。大人の起こす戦争への批判が、無邪気な笑い声の底から聞こえてくる快作だった。

続く「わんぱく旋風」は主題歌を伊東ゆかりが日本語で歌った。
映画の内容が、パリに出てくるわんぱく少年となり、このパターンは既にルイ・マルの「地下鉄のザジ」(1961公開)を知る日本の観客には新味がなく、二匹目のドジョウにはならなかった。
ところで、私が水星社の楽曲整理に頑張ろうと思った根底には、「シェルブールの雨傘」(1964)がある。
水星社の角さん曰く、「社長(木下美智子)はとても愛着があり最後まで拘ったんですが、残念ながら管理は他社に移行しました。」…という事だった。
水星社はこの映画の楽曲をカタログで丸ごと買い、会社の看板楽曲になっていた。
実は出版社同士の管理楽曲の取り合いは激しく、その奥にあるのは大体がアメリカ資本である。アメリカが、自国でヒットしそうな楽曲だと決めれば、オリジナルの出版社とのディールで、持っていってしまう。そうして日本の傘下の会社に管理を任せる。
水星社が、「シェルブールの雨傘」を看板のように大切に管理していた過去も、いっさい関係はない。
しかし、ともかく私がその譜面で勉強した事にも間違いはなく、私にとって「シェルブールの雨傘」=水星社だった。
この映画は、とにかくフランス映画の良いところが、全部詰まったような歴史的価値のある映画だ。
ジャック・ドゥミ監督とミッシェル・ルグランのつくり上げた最高傑作である。

この映画がアメリカでも認められた事が、天才ルグランの大飛躍に繋がったし、それはすぐにフランシス・レイにも続いた。それは偉大な才能が、世界に広がる必然であった。
所有リストにないという事で、私は少しがっかりしたが、ところがである。
よくよく調べて見ると何と「カサール」(Récit de Cassard)が残っているではないか!日本題は「瞳をみつめて」…日本では、あの有名な主題歌に隠れて、一般的ではないが、欧米では「Watch What Happens」という英題が付けられた有名曲である。

私は、ヤッタ!と思った。
この曲は、もともと監督ジャック・ドゥミとルグランコンビの記念碑的映画「ローラ」の中に登場する夢見る若者ローラン・カサールのテーマ曲である。
カサールは、ナントでローラに振られて世界を放浪後、有名な宝石商となりシェルブールに登場する。そして戦争に行ってしまった恋人の子供をお腹に抱えたジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と出会い、求婚し彼女を救う。
ナントから舞台を変えて、カサールは遂にシェルブールで
愛する人を見つけるのだ。
愛の別れと愛の出会い。
ドラマティックなメインテーマを引き立てながら、この曲は
人生の哀感をそっと包み込む。
私はこの歌が、大好きだ。
