Era of Suiseisha水星社の時代

Era of Suiseisha

2026.10.06
水星社の時代
フランス映画の主題歌 2

1959年に、水星社がJASRACに信託第1号として契約した記念すべき曲は、シャルル・トレネの「詩人の魂」。主題歌ではないが、日本未公開の映画「Bouquet de joie(喜びの花束)」(1951)の中で披露された歌だそうだ。(未見)この歌は、日本でも大ヒットした曲で、日本のシャンソンブーム到来を象徴する一曲でもある。
JASRACとの記念すべき最初の契約曲は複数曲あって、大きな成果を上げたのが映画「河は呼んでいる(1958)」(表紙)の主題歌だった。
童話「木を植えた男」の原作で有名な、ジャン・ジオノがシナリオを書いている。ダム工事で莫大な財産を得た少女と、父親が急死し彼女の親権を得たい親族の恐ろしい企みが描かれる。
映画もヒットしたが、中原美紗緒の歌唱(音羽たかし歌詞)で主題歌が全国に流れた。
映画には環境問題に関する啓発もあり、現代に訴求する映画だが、今は忘れられてしまった。
作詞作曲はギイ・ベア。
幾つかの日本語歌詞がつけられているが、水星社の譜面は水野汀子である。(彼女は菅美沙緒という戦前からの歌手でもあり、水星社にとっては不可欠なアーティスト。日本のシャンソンのパイオニアでもある。)

ギイ・ベア(娘エマニュエルは日本でも人気があった女優)

水星社管理のフランス映画主題歌は、特にJASRACと信託後の60年代になると急増する。
まず気になる曲を見てみよう。
ヌーヴェル・ヴァーグの時代が被っていて、アッと驚く映画主題歌が含まれている。
「二十歳の恋」は1962年に作られた国際オムニバス映画だ。各逸話の間で流れる主題歌は、ルグランと肩を並べる天才ジョルジュ・ドルリュー作曲!カルティエ・ブレッソンの写真と共に、中世の(風歌い)が歌うような、なんとも儚いメロディーが、映画の頁をめくっていく。
日・独・伊三国同盟を、結んでいた敗戦国と犠牲国の対比!
フランスはトリュフォー、イタリアはレンツォ・ロッセリーニ(ロベルト・ロッセリーニの息子)、日本は石原慎太郎、ドイツはマルセル・オフュルス、そしてポーランドがアンジェイ・ワイダ。
オムニバスの内容には出来不出来があるが、それぞれの国が苦しみ、痛めつけ痛めつけられた第二次世界大戦を超えて、それでも恋は生まれる…映画のテーマが深い。

ドルリューの主題曲が、素晴らしい!

ロミー・シュナイダーが輝くばかりに美しかった「審判」(1964)。アメリカでは、思想的理由で映画が撮れなくなったオーソン・ウェルズが、合作映画として監督。アンソニー・パーキンスを主役にカフカの世界を映画化。難解な小説に天才が挑んだ。
音楽は、17世紀〜18世紀に活躍したイタリアのアルビノーニの楽曲をベースに作られた。歌詞がつけられフランス・ギャルが歌い、日本語詞を漣健児がつけて、尾藤イサオがレコーディングした。(この盤は、聴けていない。)

J’Entends Cette Musique(Philips FL-1114/1964

こんなインテリ向けのコアな映画の主題歌までが、丁寧に扱われてラジオで頻繁にかけられていた。…豊かな時代であったなと思うのは、私だけだろうか?