Era of Suiseisha水星社の時代

Era of Suiseisha

2026.10.03
水星社の時代
フランス映画の主題歌 1

JASRACと水星社が、契約した年、1959年という区切りで、水星社の所有するフランス映画の楽曲を見てみた。
ほとんどが映画関連の作品で、一番古い「枯葉」に続くのが、1947年製作の「ジブラルタルの鮫」(1949公開)のテーマ曲。この映画は、まずまずのスパイ映画だったが、すっかり忘れられ、アラン・ロマン作曲のテーマ曲「メランコリー」だけがスタンダードになった。戦後のシャンソンブームを起こすきっかけを作ったシャンソンの一曲であり、その意味で重要である。
ジャズィかつムーディな名曲だ。

日本のシャンソンの金字塔
越路吹雪

1951年の「失われた恋」も美しい曲だ。マルセル・カルネ監督ジェラール・フィリップ主演「愛人ジュリエット」の主題曲である。
作曲のジョゼフ・コズマはハンガリー出身のユダヤ人で、戦争中はナチスの追跡から隠れながら、多くのフランス映画にその才能を傾けた。
彼はこの映画の音楽で、カンヌで賞を獲っている。「枯葉」程有名ではないが、ハンガリー人ならではの哀切なメロディが素晴らしい。
このメロディに歌詞をつけて、ジュリエット・グレコがヒットさせた。

「愛人ジュリエット」のポスター(ジャン・ドゥニ・マルクル画)ポスターが最高!

美智子はジャン・ギャバンのファンだったが、水星社が主題歌を買い付けた、ギャバン映画2本も注目に値する。
彼がいぶし銀の魅力で、浮浪児や非行少年の監督補導官になる「首輪のない犬」。(1955)1956公開…地味な映画だがポール・ミスラキの主題歌がヒット。
「メランコリー」も「首輪のない犬」もジャクリーヌ・フランソワが歌っていて、当時の彼女の人気ぶりが伺える。
 このギャバン映画を地味というならば、もっと地味なのが「ヘッドライト(1956)」
(表紙)。なにしろ原題が「とるにたらない人たち〜Des Gens Sans Importance〜」。
パリ↔ボルドーの長距離トラックドライバーのギャバンと途中の国道にある食堂で働くアルヌールとの恋。華やかなものは何一つない労働者の不倫が、見事に切なく描かれる。
またまたコズマの物悲しい音楽が、映画と共に大ヒット。これは「枯葉」にも通じるが、当時の日本人のこころを鷲掴みにした。

蔵原惟繕のオマージュ作品。

蔵原惟繕が「道」(1986)という題で翻案した事も、日本映画への影響の大きさを物語っている。
私にとっても「ヘッドライト」は、とるにたりないどころか、小品だからこそ忘れ難い映画10本には入れたい秀作だ。  
※ 管理曲には、戦前の作品もありますが、戦後の括りで解説しています。権利が移行した楽曲も多く現在調査しています。