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ジョルジュ・ムスタキ・・悲しみの庭
ジョルジュ・ムスタキはギリシャ系ユダヤ人として生まれ、フランスで教育を受けました。フランスの伝統を受け継ぐシンガーソングライターとしてフランスを地盤に活躍、その他イタリアやアメリカなどでも人気を博しました。当初はエディット・ピアフなどに曲を提供。歌手としてのデビューは大ヒットした「異国の人」です。
シャンソンだけではなく、ボサノバやギリシャ的な曲風を取り入れたものもあり、詩にも愛や孤独といったテーマのほかプロテクトソングや自由や平等などをテーマにしたものまで幅広く、独自の世界観をもち、魅力的な詩が多々あります。
日本ではテレビドラマ「バラ色の人生」の挿入歌として数曲が紹介されました。また、金子ゆかりが歌う「もう遅すぎる」などが有名です。2013年79歳で亡くなりましたが、いまだ、根強い人気があります。
当社では多くのムスタキの曲目の著作権を持ちますが、今回は彼の代表的な曲の一つ「悲しみの庭」の詩を紹介します。
悲しみの庭
かつて庭があった
子供たちよ、聞いておくれ。
君たちのまわりは、コンクリートやスチール、タールやアスファルトばかりだけれど、
私が小さかった頃は、その庭は緑の大地だった。
大地と呼ばれる庭があった
太陽の光がきらきら輝いて、たくさんの果物が取れた。
天国でも地獄でもなく
君たちが見たことも聞いたこともないような、豊かな大地があった。
かつて庭があった。
木の家で、草のベッド、みんながそこで幸せに暮らしていた。
おだやかな川があちこちに流れ、
名もない花が咲いていた。
そこには大地と呼ばれる庭があった。
緑の庭は、私のおじいさんのそのまたおじいさんの、
もっと昔から大切に守られていて、たくさんの子供たちが育っていった。
でも、その庭はなくなってしまった。
だれもが、いつも幸せに暮らしていた庭。
私はいまもその庭を探しているが、どこにも見当たらない。
もう。見つからないのだろうか?
ムスタキの言う「庭-JARDIN」は、そこに花が咲き、川が流れるような緑の大地を指します。多くの人がそこで遊び、育っていった庭。
タイトルにつけられた「悲しみ」とは、このJARDINが都市に変わり、残されていないことへのムスタキの嘆きです。
今では、すべての物事がお金で換算されるようになり、その所有者が独占できる仕組みが生まれました。そもそも大地は人々が平等に空気を吸って、水を飲み、そこで生活をする共有のものでした。そんなことを喚起させる楽曲です。今のSDGsにも通じる楽曲といえるでしょう。
ムスタキの楽曲を聴きながら、じっくり詩の内容も楽しんでいただけたら嬉しく思います。